経営とデジタル化

中小企業のサイバーセキュリティ!「お店の防犯」から学ぶデジタル時代の基本対策

中小企業のサイバーセキュリティ!「お店の防犯」から学ぶデジタル時代の基本対策

「うちは小さな会社だから、サイバー攻撃なんて関係ないでしょ?」「セキュリティって難しそうで、何から始めていいか分からない…」そんな風に考えていませんか?

この記事では、中小企業が知っておくべきサイバーセキュリティの基本を「お店の防犯対策」に例えて視覚的に分かりやすく解説します。「セキュリティは難しい」と感じてきた方も、身近な防犯対策と関連付けることで基本が理解できる内容です。

目次

中小企業がサイバー攻撃の標的になりやすい理由

「うちは小さな会社だから狙われない」と考える方も多いかもしれません。しかし、中小企業も十分にサイバー攻撃の対象になる可能性があります。

その背景として考えられる理由は…

  • セキュリティ対策が手薄になることが多い
  • 専門知識を持つ担当者を置きにくい
  • 大企業の取引先として「踏み台」に利用される場合がある
  • 対策コストを抑えたい意識が働きやすい

実店舗で例えると、「小さなお店だから泥棒に狙われない」と考えて防犯対策を怠るようなものです。 実際には警備が甘いお店ほど、狙われるリスクが高くなる傾向があるのではないでしょうか。

デジタルの世界でも同様のことが起こる可能性があります。


「お店の防犯対策」で理解するサイバーセキュリティ

「お店の防犯対策」で理解するサイバーセキュリティ

実店舗の防犯とサイバーセキュリティの共通点

実店舗の防犯対策をイメージすると、サイバーセキュリティがグッと身近に感じられます。

入り口の管理が最重要

実店舗の場合

  • 鍵をかける
  • 防犯カメラを設置
  • 怪しい人の入店をチェック

デジタルの場合

  • パスワード管理
  • ファイアウォール※の設置
  • 不審なアクセスの監視

ファイアウォールとは: インターネットと社内ネットワークの間に設置する「デジタルの門番」。許可されていない通信をブロックする仕組みです

貴重品の保管方法

実店舗の場合

  • 現金は金庫に保管
  • 重要書類は施錠できる場所に
  • 顧客情報は厳重管理

デジタルの場合

  • データの暗号化※
  • アクセス権限の制限
  • 定期的なバックアップ

暗号化とは: データを特殊な鍵がないと読めない形に変換すること。デジタルの「金庫」のような仕組みです

スタッフの教育と意識向上

実店舗の場合

  • 防犯マニュアルの共有
  • 不審者対応の訓練
  • 定期的な防犯チェック

デジタルの場合

  • セキュリティ研修の実施
  • 怪しいメールの見分け方
  • 定期的な対策見直し

今日から始められる基本的なセキュリティ対策

レベル1: 基本中の基本(コストをかけずに始められる対策)

パスワード管理の徹底

  • 複雑なパスワードの設定: 「Password123」のような単純なものは避ける

    • ❌️:推測されやすいもの
      Password123, 123456
    • ✅️:12文字以上・英大文字/小文字・数字・記号を組み合わせたもの
      dc6LZ7wKGF3$
  • 使い回しの禁止: 同じパスワードを複数のサービスで使わない

  • 適切な変更タイミング: 流出の疑いがある場合や、定期的な見直し時期に変更する

ソフトウェアの更新

  • OS※の自動更新を有効化
  • セキュリティソフトの導入
  • ブラウザやアプリの最新版利用

OSとは: オペレーティングシステムの略。WindowsやmacOSなど、パソコンの基本的な動作を管理するソフトウェアです

レベル2: 一歩進んだ対策(一定のコストが発生する対策)

クラウドサービスの活用

  • データの自動バックアップ
  • 多要素認証※の導入
  • アクセスログの確認

多要素認証: パスワードに加えて、スマートフォンアプリやSMSでの認証も組み合わせる仕組み。銀行のワンタイムパスワードのようなもの

スタッフ教育の実施

  • フィッシングメール※の見分け方
  • USBメモリの安全な使い方
  • SNSでの情報発信の注意点

フィッシングメール: 正規の企業を装って個人情報を騙し取ろうとする詐欺メール

レベル3: 本格的な対策(より高度で専門的な対策)

専門サービスの導入

  • セキュリティ監視サービス
  • データ復旧サービス
  • セキュリティコンサルタントの活用

万が一の事態に備えた対応計画

インシデント対応※の基本手順

インシデント対応: セキュリティ事故が発生した際の対応手順

発見・報告フェーズ

  1. 異常の早期発見: 普段と違う動作やアクセスに注意
  2. 迅速な報告: 責任者への即座の連絡
  3. 被害範囲の確認: どの程度の影響があるかを把握

対応・復旧フェーズ

  1. 二次被害の防止: 感染拡大や情報漏洩の阻止
  2. 証拠の保全: 後の調査のためにログや痕跡を残す
  3. システムの復旧: バックアップからの安全な復元

事後対応フェーズ

  1. 原因分析: なぜ起きたのかを徹底調査
  2. 再発防止策の策定: 同じことが起きないための対策
  3. 関係者への報告: 顧客や取引先への適切な説明

まとめ

中小企業のサイバーセキュリティは「お店の防犯対策」と同じように考えることで、身近で実践しやすいものになるかもしれません。

「完璧な対策」を目指すよりも、「基本的な対策」を確実に実行することが大切だと考えられます。

まずは今日から始められる基本対策(パスワード管理、ソフトウェア更新)から取り組み、段階的にレベルアップしていくことをおすすめします。

「小さな会社だから関係ない」ではなく、「小さな会社だからこそ、できる範囲でしっかり守る」という意識を持つことで、デジタル時代の事業継続につながるのではないでしょうか。

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くぼ よしゆき
北海道厚岸町生まれ。宮城県仙台市在住。弘前大学大学院理工学研究科(博士前期課程)修了。Web制作会社 → デザイン会社 → 1616。WEBサイトのプランニングから撮影、デザイン、コーディング、CMS導入まで幅広く活動的な感じみたいな。